Saturday, April 11, 2009

「デッドマン」 (Dead Man)

今夜はジム・ジャームッシュの「デッドマン」を見た。西部劇映画の詩的なパロディとでも言えるだろうか。旅。瞑想。そして素晴らしい台詞が幾つも挿入されている。

クリーブランドから西部行きの電車に乗るウイリアム・ブレーク(ジョニー・デップ)が主人公だ。彼はアリゾナのマシンにあるディキンソン・メタル・ワークスという会社から仕事のオファーをもらった会計士だ。列車の旅は、物語のプロローグだが、そこでは客車を共有にする人々がだんだん変化していく様子が描かれている。旅が続くにつれて、彼らはだんだん乱暴になってゆくのだ。

マシンで、ブレークは自分にオファーされた仕事がもう誰かにとられていたことを知る。一文無しのブレークだが、買春婦に拾われる。だが彼女の古いボーイフレンドが現れ、ブレークを撃つ。買春婦はブレークをかばって彼の前に立ちふさがるが、弾は彼女の体を貫通して、ブレークの胸に深くめり込む。ブレークはボーイフレンドを撃ち、彼の馬を盗んで町から逃げる。

問題はボーイフレンドがディキンソンの息子で、馬はディキンソンご自慢の馬だったことだ。ディキンソンは三人の非情な殺し屋を雇い、ブレークを探して、その死体を持って帰れと彼らに命令する。

そして雑木林の中で、高い教育を受けたインディアンの「ノーバディ」がブレークを見つけてしまう。ノーバディはブレークの胸から弾を取り出そうとするが、あまりにも深くめり込んでいて取り出させない。弾がとりだせないのだからブレークが死ぬのは目に見えている。彼に残された時間はあまりない。

ノーバディはブレークの名前を聞き、感激する。彼はイギリスに住んだことがあり、詩人のウイリアム・ブレークの作品が大好きだったのだ。ブレークが死につつあることを理解しているノーバディは、ブレークを、空を映す水のある場所へ連れて行くことにする。魂たちが住むと言われている「もう一つの世界」へブレークが戻れるようにだ。

ノーバディは大陸を横切る(彼らが馬で進む中、木々が変化してゆく様子で描写される)旅にブレークを導き、オレゴンでノーバディはその水のある場所を見つける。途中で報酬につられた多くの男たちがブレークを殺そうとするが、運と拳銃の腕によって、彼は皆を始末してしまう。ただ非情な殺し屋の中でも、最も悪辣で、他の二人を殺してしまったコール・ウイルソンだけはずっと追ってくる。

ノーバディとブレークはついにその水のある場所にたどり着くが、ブレークは疲労し、もうほとんど死ぬ寸前だ。ノーバディはカヌーを用意し、それにブレークをのせる。ブレークはカヌーの中に横たわり、水がカヌーを陸からどんどん遠ざける間、空から降る雨を眺める。彼が遠ざかる陸の上に見た最後のものは、コール・ウィルソンがバッファロー・ライフルで彼に向かって撃つという光景だ。だがノーバディがウンチェスター銃でウイルソンに狙いを定め、二人は互いに撃ち合って倒れる。そしてカヌーは潮にのって漂い去ってゆく。

音楽はニール・ヤング。ほとんどはエレキギターのソロかデュオで、ハウリングを起こしている。最初は、時代錯誤のような印象を受けてイライラしたが、最後には感情移入してしまった。エンディングのトリップ気分を高めている。

ジャームッシュはかなりの予算をこの映画で得たようだ。これもまた、白黒で撮った、奇妙な、商業的でない映画と言えるが、カメラはロビー・ミュラーが担当し、素晴らしい映像を見せている。古典的なハリウッドの撮影技術とまではいかないが、所詮、昨今のフィルムは、昔の、リッチなファイングレインのスローフィルムがやってみせたような芸当はできないのだ。ミュラーに白黒映画を撮るために必要な、充分な経験があったともいえない(毎日、仕事として白黒映画を撮り、最終的に何十年もとった古いカメラマン達と比べて、という意味でだ)。

興味深く、ほとんど奇妙な選択と呼べるような俳優陣がそろっている。ロバート・ミッチャムがディキンソンとして出演するなど、素晴らしいスター俳優の特別出演、罠猟をする猟師にロックスターのイギー・ポップ、ブレークを殺そうとするボーイフレンドにガブリエル・バーン、頑迷な説教師にアルフレッド・モリナ、口汚いが可笑しな猟師にビリー・ボブ・ホーントン……リストの名前はまだまだ続く。現れては消えていく登場人物たちだが、どの人物も見る価値があり、楽しませてくれ、そのままもっと見続けたくなるほどだ。デップはもちろんいつも素晴らしく、いつも通りいい演技をしている。彼が俳優として失敗した作品はまだ見たことがない(もちろんあの「海賊」映画の二編は見るのを避けているが……)。

これは、絶対僕の好みじゃないと思い込んでいながら、見ると予想よりずっと素晴らしいと思うタイプの映画だ。これが劇場公開されたときに見ればよかったと思う。

英語によるレビューの原文はここをクリック CLICK HERE

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